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仄恋十題
01気が付けば君を探してる
そもそも自分は所詮一般兵に過ぎず、相手はソルジャー、しかもクラス1stなのだ。
早々顔を合わせる機会などないし、あったとしても己のことなど気にかけたりはしないだろうと思っていた。彼の中で個として認識されていないだろう、と。
なにせ兵士など掃いて捨てるほど、数だけなら数えきれないくらい存在しているのだから、その中からたった一人が果たして目につくのかと言えば答えは否である。そのはずだ。
遠くから自分が見ているだけ。
それでいい。
以上を求めることがまずおかしい。
思って、いたんだ。
「ソルジャーになりたいって?
がんばれよ」
「トモダチ」想いの君の表情と声、温もりが、焼き付いて離れてくれない。
だからってどうしようもないのに。
02あんな表情、知らない
ザックスが常なら背負っている大剣を手にし見詰めている時、彼の中では周囲に人がいなくなる。
いや、正確には「二人きり」になるのだろう。
そこに俺は入っていけない。
入りたいとは思っていないけれど。
ただ。
その時の表情が、あまりにも。
―――――まるで恋い焦がれているかのような
一途に誰かを想い続けるザックスが羨ましかったのか、それともザックスなあんな顔をさせて想われ続ける「誰か」が羨ましかったのか。
どちらにせよどうでもいいし、どうしようもないことだとそっと踵を返す。
俺は何も見なかった。
本人すら自覚していない、あんな表情は、知らない。
そのままで。
そのまま、で。
03傍にいるだけで満足できたら
そんな風に思えたらどんなに幸せだろうか。
だってたとえどんなに苦しくたって、傍に、横に、想う相手がいるということなのだから。
失くすくらいなら、最初から持たなければいいのに。
そうすることが出来ない弱い自分が大嫌いだ。
一人になりたい。
でも独りは嫌だ。
傍にいてほしかった。
傍にいたかった。
どうして一緒に生きられなかったのだろう。
彼も、彼女も。
奪ってばかりの己はこうして生きているというのに。
会いたい。
笑顔が見たい。
がんばれって、大丈夫って、言ってほしい。
それだけでいいから。
じゃないとこわくてたっていられないんだ
04掠めた指先
ふとした瞬間に、それは起きたりする。
意図せぬ接触。
例えばすれ違う時であったり、何かを渡す時であったり。
ごめん、謝って急いで手を引っ込める様を、不思議そうに見ている。
視線を合わせることなんて出来やしない。
あんな綺麗な瞳で、覗きこまれたりしたら。なにもかもが、自分ですら理解出来ない箇所をも、暴かれそうだ。
簡単な接触が恐くて、でもどこか確かに嬉しくて、ちょっとの絶望を抱いたりしている。
そんな意図せぬ接触に、僅かばかりの意思をこめたりして、こめようとしたりして、そっと指先を伸ばしてみる。
そう、彼が己に触れるように、気軽に。
やってみてもおかしくはない。
同じようにしてみるだけだ。
―――彼のそれには意図があったとしても意志がこもっていないのに?
途端自分がどこまでも汚ないように思えて、ああもう触れられない、慌てて手を戻そうとするのに指先だけがそっと掠めてしまったりして、結果振り向かれてしまう。
ん?どうした?なんて眩しい笑顔付きで。
そんな顔をされて、もう何も出来なくなって、ごめん何でもないんだ、精一杯の笑顔を張り付けてみせる。
更なる追求の視線を避けるため、慌てて話題を探して誤魔化して、明らかにおかしいのに合わせてくれるから、優しいなって嫌な気持ちになってしまう。
ひどく身勝手だ。
掠めた指先が熱く、冷たい。
変わることなんて、本当に、求めていないから。
そこに込めてしまった想いがどうか伝わっていませんように。
05少しだけ速まる鼓動
06たったそれだけのこと、なのに
07答えを失くした間柄
08触れたくて、でも触れたくなくて
09秘めて隠して、押し殺して
10泣きたくなったら僕を呼んでね
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