ナッツ→ココ
「いよいよだな」
式を目前に控え、正装に身を包むココに声をかける。
こうして二人きりになるのも久しぶりだ。執務を理由に顔を合わせることをひたすら避けていた。迫りくる事実を目の当たりにするのが怖かったから。
(その理由は絶対にあってはならないものだったのに)
いつかこんな日がくることなど、それこそ一国の王子として生を授かった瞬間から決まっていたのだ。あの時間が永遠に続くわけがないと。
当たり前の未来でも、それは遠い先であろうと思っていた。しかし未来は現実となり、やがて過去へとなっていく。真白の姿に痛むこのおかしな心さえ、いずれは。
「おめでとう、ココ」
どうか幸せに。
口に出すことが出来ない弱い自分を許しほしい。親友の幸福も祈れないとは呆れてしまうが、すまない、そう謝ることもこの身では無理で。
今ではもう夢のようなあの日々を、目の前の笑顔を、そっと抱きしめ手を離し、それでも決して忘れないと、ゆっくり背をむけ別れを告げた。
2007.09.16