アスラン←キラ
嘘つき。
軽く呟く。
特に重い意味なんてないんですよ、そんな風に。
そんな風に。
君が僕を見る。
聞こえたのかな。
変な顔をしている。
いきなり何を言い出すんだコイツは、なんて思ってるんだろうか。
それとも僕が脈絡もなく大した考えすらなく音にしただけの言葉の裏を探っているのだろうか。
何も出てきやしないのに。しないのにね。
君は変な顔して、でも僕は普通の顔をしている。きっと。
鏡がないから分からないけど。
君は意外と思っていることが顔に出る。
僕は出さない術を手にいれてしまった。
別にそうなりたかったわけじゃないんだけど、いつの間にかそうなっていた。
今ではありがたいなと思ったりするときだってある。
ねえそんな風に生真面目に考えないでよ。
必要なんてないんだからさ。
立ち上がって窓を開ける。
枠が軋んだ音を立てて不快だが、気にせず無理やり全開にした。
風が部屋の中にふわりと入ってくる。
室内の空気を新しくしてくれた。
なんてそんなことを予想していたのだけれど、外はまったくの無風状態で、期待した通りにはなってくれない。
なってはくれない。いつだって。
「キラ?」
「嘘つきだね。僕は」
訝しげに君が僕の名前を呼んだりするから、あー何か答えなくちゃって何かを口に出す。
外を向いたままの僕はどんな顔をしているんだろう。
誰に見られているわけでもないから別にいいんだけど、ちょっとだけ気になった。
小さく、ごめん、謝罪を口にする。
聞こえたかな。聞こえてないかな。
どっちでもいいや。
早く呆れて部屋から出ていって。
君がそうしないのは分かっているけど。
ああもう。
本当に思い通りになりやしない。
僕は一体何に対して謝ったんだろう。
それすら嘘つきで、じゃあ僕の真実はどこにあるんだろう。
多分真実なんてどこにもない。
そんな風になってしまった。
ありがたい。
うん。
きっと。
それでいい。
それで、いい。
2009.05.12