ALC ビル 修復

本編〜AC クラウド

多分言いたいことがたくさんあった。
もっともっと、色んな話もしたかった。
ほんのり自覚した形容しがたい想いは隠す必要がないことに安心するべきだろうか。
何せ最も知られたくない相手が既にいないのだから。
今なら、と思うことが多すぎる。
失ったものなど数え切れなくて、何か出来たのではないかと思うが、所詮は後の祭りに過ぎない。
手が届かなかったこと、いや、それすら出来ずにただ傍観していた愚かな自分。
守りたいものと己の力量があまりに釣り合わなくて、本当にどうしたらいいのだろう。
むしろ逆に護られているというのだから。
結局橋から落ちた彼女を助けられなかったあの時から、何一つ成長出来ていないのだと思う。



ただ、
それでも。



命懸けで守ってくれた、こんな自分に託してくれた、それを思うと無様な姿など晒せやなしない。
大切な大切な彼女の傍で、守り、支え、一緒に。







(こんな自分が)
(赦されていいのか)
(罪にまみれた全身で)
(そんな幸せを)










ミゴロシニシタノニ?










痺れるような黒い痛みが彼女に触れることを戸惑わせた。
きっと彼女は許してくれる。
大好きなあの笑顔で、優しく包み込んでくれる。
なにもかも。
まるで罰せられているかの感覚に、何処か遠くで安堵している自分なのに。
それすらも。
あいつの分まで生きよう、そう決めた。
しかし、そんな決意はいとも容易く崩れていく。





見上げた空はどこまでも青く、柔らかな風がクラウドの髪をくすぐるが、今はまだそれに気付く余裕など到底なかった。
俯いてばかりの彼には降り注ぐ暖かな陽射しではなく、己から決して離れることのない影しか見えていない。









2009.08.03