ちょっとやってみただけです
あのまま適当に放置して一足先に屯所に帰ってきたのだが、まあそろそろ帰ってくるだろうなと真っ暗な部屋でぼんやり思いながら寝転がっていたところにひどく荒い足音が聞こえてきた。
壊れるんじゃないかと少し心配になるくらい乱暴に襖が開かれるのを全く体勢を変えずに見上げる。
ちなみに心配したのは土方さんの財布事情だ。大量のマヨネーズなどという馬鹿みたいな無駄遣いをやめればいいのに。と言っても、この男の嗜好だとかそんなものは知ったこっちゃないし何の関係もないけれど。
そんなことをつらつら考えているうちに、大股で中に入ってきた土方さんに胸ぐらを掴まれ持ち上げられる。
うわーやめてくださいよ、そんなに顔近付けたら鼻息がかかるじゃないですか。
なんて素直に思ったことを素直に口にしたら、勢いよく右腕を振り上げた。
逆光で見えづらくとも破け解れて所々汚れてしまっているのが分かる隊服を目に入れ、ああ殴られるんだなあと僅かに歯をくいしばっていたのに、なかなか振り上げられた拳がおろされない。
どうかしたのかと目線をずらすと、土方さんがある箇所を見ているのがわかった。
なるほどなるほど、理解した。でも安心してください。
「血なんか一滴も出てませんよ」
だらりと伸ばしたままだった腕を持ち上げ、右の首筋を指差す。
瞬間鈍い音と左頬に衝撃が、そして少し遅れて痛みが広がってきた。
しまった、ほんのちょっと前までは殴られる準備をしていたのに。血の味で中が切れたのを感じる。
俯きながらどうしてあんなことをした、と尋ねられたので、余興ですよ、そう応えると更にもう一度殴られた。
吐き捨てるように身を放される。
土方さんが立ち上がり出ていこうとしたのでその背に向かって、隊服弁償しましょうか、と気になっていたことを口にすると、一瞬動きを止めたけれど何も言わず乱暴に、しかし入ってきた時よりは若干静かに襖を閉めて出ていった。
再び部屋に暗闇と静寂が戻る。
一瞬見えた泣きそうな顔は当分忘れられそうにない。
たとえそれが都合のいい見間違いだとしても。
2009.01.09
2009.01.15(UP)
三週間にわたって愛を確かめたという、ね。大変おいしゅうございました。も、ほんと、ありがと。萌えすぎて死ぬかと思いました。
レポートがんばった某お方にメールで送りつけ^^