こんな世界を君とふたりで
昼過ぎ一番の授業に眠くなるのは仕方ない。腹も満たされているし、なにより今ロイドが座っている席は窓際にあるのだ。ぽかぽか陽気に包まれてしまったら、ようこそ眠りの世界へ!となるのは避けられないと思う。
やばいなー寝ちゃいそうだなーと睡魔に半分近く連れてかれているような状態だった時、ズボンのポケットから振動が伝わってきた。
『まぬけ面』
こんな失礼なメールを送ってくるのは一人しかいない。ちらりと斜め後ろの辺りに目をやると、目があう。ペンを持っている側の手を軽く振ると、机の下に潜り込んでいる手で何か操作している様子が見えた。
『目覚めた?』
『覚めました。ありがとうございます』
『感謝が足りないなー』
『ガリガリくん一個』
『のった』
お互い一言二言しか送らないしあまり絵文字も使わないから(だって面倒くさいし)どうしたって淡々とした字面になるのだが、その方が実際の相手の声で文章が聞こえてくる気がする。ゼロスはどう思ってるのか知らないが(だってアイツはたまにこってこてのデコメールを送ってきたりもする)、ロイドは対アホ赤毛の時は少なくともそう思っている。
『週末ヒマ?』
『ヒマ。なんで?』
『セレスの』
『あーそういやもうすぐ誕生日か』
こんな風にあっさりと週末の予定も決まっていく。とても居心地のいい関係だとしみじみしながら、自分もセレスの誕生日プレゼントを何にしようかと悩む。
下を向いて画面を見つめながら『今欲しがってるものとかあるのか?』と打とうとした時だった。
ぽかぽか陽気に包まれ、柔らかい日差しにロイドの席は照らされている、はずだった、はずだったのだが。
すっと視界に影が差される。
ん?と顔を上げると、机の前にものすごくいい笑顔をしたリフィル先生が立っていた。
「俺だけ怒られるなんておかしいだろ!」
「仕方ないっしょー。見つかっちゃったのはロイドくんなんだから」
「あーあ…俺の放課後が…」
「リフィルせんせ、何だって?」
「資料整理。使った資料を図書室に戻しとけ、って。しかも結構すごい量」
「はいはい、お供いたしますとも」
「さっきのガリガリくん取り消し」
「ちっ…」
「舌打ちすんな」
「へーへー。ほら行こうぜーとっとと終わらせてCD見に行こ」
2008.01.27(発行)
2009.08.21